活動報告
イベント
2025.12.04 written by AIC企業企画
2025年12月4日、三田キャンパス西校舎ホールにおいて、「2025 AIインサイトサミット Winter」を開催しました。本イベントでは「生成AIが拓く動画・ゲームの未来」をテーマに、各業界の第一線で活躍する登壇者を迎え、生成AIとクリエイティブ分野の最前線について議論が行われました。

はじめに、AI・高度プログラミングコンソーシアム(AIC)代表の泰岡顕治氏より開会の挨拶がありました。

続いて、株式会社AI Frog Interactive 代表取締役CEOであり、デジタルハリウッド大学大学院教授の新清士氏による基調講演が行われました。

新氏の基調講演では、画像・動画AIの最新動向について、具体的な事例を交えた解説があり、画像・動画分野におけるAIの進化は著しく、人間とAIによる制作物の区別が困難になりつつある現状を示しました。
また、生成AIの発展の歴史にも触れ、これまで中心だった静止画像から、現在は動画生成へと技術が進化していることを解説しました。今後は、生成された画像から動画の世界へとリアルタイムに没入する体験が可能となり、メタバース領域への応用も期待されるとの見解が述べられました。
さらに、ゲーム業界における生成AIの活用事例についても言及があり、アイデア創出や3D図面作成などの分野で、既に多くのゲーム会社が生成AIを導入している現状が紹介されました。今後の展望としては、動画生成における一貫性が向上することで、外部委託に依存せず、少人数・小資本でも短時間に高品質なコンテンツ制作が可能になる時代が到来すると示唆されました。
一方で、生成AIを活用する際には、学習段階と生成段階を適切に区別することや、著作物の取り扱いに十分留意する必要がある点についても強調されました。
基調講演に続き、AIC共同代表であり、慶應義塾大学 理工学部 訪問教授の椎名茂氏の司会のもと、映画・ゲーム・広告業界の第一線で活躍する方々によるパネルトークが行われました。
パネリストは以下の通りです。

島田氏は、生成AIによる動画生成の技術的進化を評価しつつも、プロフェッショナルな映画制作のワークフローにおいて、現時点でどの程度実用的に活用できるのかについては、慎重な見解を示しました。
内海氏は、ゲーム業界において、生成AIを用いたゲームのモデリングに対し、ユーザーからの批判が一定数見られ、受容が進みにくい現状があることを指摘しました。
また、エンターテインメント分野では、効率性よりも面白さが重視されるため、テクノロジーの進化と同時に、人間側の感性や受容度を確認しながら導入を進めていく必要があると述べました。
森氏は、生成AIの進化は理論面だけではなく、実際の制作現場で活用することで研究や技術開発へフィードバックされると述べました。クリエイターが持つノウハウとAIを組み合わせることで、技術の質がさらに高まると指摘しました。
また、消費者が「AI疲れ」を起こさないよう、いかに人間味を感じさせる表現や広告を打ち出していくかが、今後ますます重要になるとの見解を示しました。
質疑応答では、動画における生成AIの今後の展開や、クリエイティブ業界への影響について、参加者との間で活発な意見交換が行われました。

動画生成における「一貫性」の課題が解消された場合の将来像について問われ、新氏は、技術の最終的な到達点を正確に見通すことは困難であり、今後も高速な進化が続く中で、明確な未来像を断定することは難しいとの見解を示しました。
また、生成AIの普及によって人間の技術力が相対的に低下するのではないかという問いに対して、森氏は、今後は単なる技術力以上に「意味を生み出す力」が重要になると指摘しました。そのためには、目に見える成果だけではなく、自身の体験や思考をいかに深められるかが、創造性の源泉になると述べました。
最後に、参加者に向けて、パネリストからメッセージが送られました。
講演会終了後には、三田キャンパス生協食堂にてネットワーキング会を開催しました。

学生・教職員・企業関係者が立場や年齢などの垣根を越えて交流し、講演内容をもとにした活発な意見交換が行われました。

本イベントは映画・ゲーム・広告業界を中心に、生成AIの現状と将来像について多角的な議論が交わされる、非常に有意義な機会となりました。
ご登壇・ご来場いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。
(撮影:竹松 明季)